参院選の世論調査で焦点の一つにもなった政府のコメ価格の取り組み。令和の「米騒動」とも呼ばれ、連日、日本人の主食であるコメに関する報道が続いていました。高値が続いていたコメの平均価格は、政府による備蓄米の放出により、ピークだった2月頃に比べると下落をしています。
江藤元農林大臣が「コメは買ったことがない」と発言して辞任に追い込まれましたが、私自身も妻の買い物に付き合うことはあっても、これまでコメの価格を気にしたことがなく、今回初めて小売価格相場を知る機会となりました。
備蓄米について、6月23日の日経新聞「経営の視点」に「官製版版『コメ流通革命』の皮肉」という記事が掲載されていました。
令和の米騒動。日本最大の小売業に育てたダイエー創業者、中内功氏が存命ならどう見ていただろうか?中内氏の元秘書は「『どこからでもええから早くコメをかき集めてこんかい』と檄をとばしていたでしょうね」と予想する。自らを「安売り大魔王」と名乗り「日本の物価を半分にする」と宣言して官の規制や古い商慣行と対峙する闘う商人であった。今回「コメの流通革命」の舞台を用意された小売業が、大きく口を開けて待ち、視察に訪れた小泉農相を笑顔で迎え入れた。気概を見せたのがパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、コメ流通の問題点に関する意見書を小泉農相にて提出、不透明なコメ流通を白日の下に晒した。(中略)米国の経営学者、ピータードラッカーは約60年前、流通業を「経済会に残された最後の暗黒大陸」と呼んだ。
経済産業省のデータによると、卸売業の販売額は1989年には502兆円に達していましたが、近年ではその6割程度にまで縮小しています。原因としては、インターネットの普及によるECサイトの浸透や、生産から販売までを自社で行うファストファッションの拡大による流通革命によって、卸売業のニーズが低下したことが挙げられます。
卸売業もEC販売への進出や、生産者へのコンサルティング力の強化など対策を進めていますが、日本全体の市場が縮小していることもあり、今後も生き残り競争は一層厳しくなっていくでしょう。
今回の令和のコメ騒動は、改めて日本の農業政策の問題点を全国民が共通認識を持つきっかけとなりました。食料安全保障の観点から見ても、日本の農業を強くする必要があります。担い手が減少を続ける農業を守るだけでなく、流通を含めた業界全体の改革を進める契機になればと考えています。
私たち民間企業は、時代のニーズに合わなくなれば淘汰され、必要とされる企業だけが生き残ります。必要とされる企業であること…「社会の要請する人材を適切に社会に提供することにより、情報化社会の進展と福祉社会の増進に寄与します。」という理念を実践してまいります。
日本リック株式会社
代表取締役 日高一隆