先月、今村翔吾さんの小説『じんかん』を読みました。主人公は松永久秀。歴史上は「戦国三大悪人」の一人とされ、織田信長に追い詰められて壮絶な最期を遂げた武将として知られています。近年は再評価が進み、かつての「裏切り者」「調略家」といったイメージとは異なる人物像が注目されています。
久秀はその生い立ちに不明な点が多く、本作では作者が創作を交えながら、人との出会いや別れを軸に久秀像を描いています。史実の久秀も、歴史上の評価とは異なり、人情に厚く、領民からの支持も高く、部下思いであったと言われています。また、出自や身分にとらわれず人の才を見抜く人物で、織田信長からも一定の信頼を寄せられていたようです。強烈な個性を持つ信長の下で葛藤しながらも、自らの信念を貫いた人物として描かれている点が印象的でした。
中でも特に心に残ったのは、久秀の「仲間との向き合い方」です。兵士を戦の駒として扱うのではなく、一人ひとりの力を信じ、共に戦う仲間として接している姿が描かれています。チームとは、上司が指示を出し、部下がそれを待つだけの場ではありません。一人ひとりが主体的に関わり、互いを尊重し合うことで初めて力を発揮するものだと感じました。立場に関係なく、周囲を支え、意見を交わし、チームをより良くしていこうとする姿勢こそが、組織の力を高めていくのだと思います。
また、コロナ前と比較して、AIの進展による社会変化のスピードはさらに加速しています。企業においては、過去の成功体験が通用する期間は短くなりつつあり、多様なバックグラウンドをもつ人々が意見を交わせる土壌がいっそう重要になっています。それこそが、良いチームづくりの第一歩ではないでしょうか。
『じんかん』に描かれる松永久秀は、歴史の中では悪人とされながらも、作品の中では非常に人間味あふれる人物として表現されています。人は一面的な存在ではなく、多様な側面を併せ持っています。そのことを理解し合いながら働くことが、現代の社会・職場においてますます求められていると感じます。
今回の読書を通じて、「これからの上司と部下の関わり方」について改めて考える機会になりました。一人ひとりが主体的にチームへ関わり、互いを尊重しながら力を発揮できる環境づくりを、今後も大切にしていきたいと思います。
日本リック株式会社
代表取締役 日高一隆